可視化によるメリットとは?見える化との違いや注意点も解説!

ビッグデータの時代と言われてから久しい現在、さまざまなものがデータという形で可視化できるようになりました。しかしそれらを業務の中でいかに活用できるかが、企業において重要な課題となっています。

今回は可視化とそれと似た意味で用いられる見える化の違いを踏まえた上で、可視化の目的やメリット、推進する上での注意点を確認し、データを可視化するためのツールをご紹介します。

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可視化とは?

可視化とは、直接目に見えないものを目で見て分かりやすい形に表現することです。
業務や社内の身近な例だと、以下のようなことが挙げられます。

  • 関係という目に見えないものを組織図というフォーマットで表す
  • 手順という一連の流れをマニュアルという形で表現する
  • 作業の進捗状況をパーセンテージで定量的に表す
  • 顧客満足度を点数で定量的に表す
  • 打ち合わせの内容を議事録にする
  • 前年度と今年度の売上をグラフにして差を表す
  • A社製品とB社製品の違いを〇✕表にして差を表す

このようにビジネスの場においては、特に図表やグラフを用いてものごとを表すことを「可視化」と呼んでいると考えられます。

マニュアル、パーセンテージ、レポート、グラフといった抽象的なものを分かりやすくあらわす可視化の例

「可視化」と「見える化」の違い

可視化と似たような意味として、「見える化」が使われることもあります。

「見える化」は現トヨタ自動車の岡本渉氏が1998年に発表した「生産保全活動の実態の見える化」という論文の中で初めて用いられたといわれています。これは工場の生産ラインで異常が発生した際に、すぐに異常の発生を周囲に伝えるだけでなく、どんな種類の異常が発生したのかが瞬時にわかるような仕組みを「見える化」としています。

憶測ですが、工場の作業においては異常の種類によっては作業者に危険が伴うため、作業者に絶対に知覚させるという、ある種の強制性があるのではないでしょうか。

日常の会話においては「可視化≒見える化」とほぼ同義で扱われることもあると思いますが、上記を踏まえると厳密には以下のような違いがあると考えられます。

  • 可視化
    • 目で捉えにくいある事象を目で見て分かりやすい形に表現すること
    • また見える化に対し、必要な時に情報・データを確認できる仕組み
  • 見える化
    • 捉えにくいある事象や結果を絶対的・強制的に知覚させるための仕組み
必要な時に確認できる「可視化」と、目に入るところに常に表示したり、強制的に知らせる「見える化」の違い

必要な時に確認できればいいのか、ある事象や結果がいつでも目に入るようにしたいのか、目的によって「可視化」を行うのか「見える化」を行うのかが変わってきそうですね。

ものごとを可視化する目的

それでは可視化を行う目的とは何でしょうか?
可視化すること自体が目的になってしまわないよう、ここでしっかり確認していきましょう。

現状を把握しやすくすることで作業効率を上げるため

何かを改善するには、今どうなっているのかを把握することが重要です。修正すべき点を見つけるために、まずは可視化をして現状を把握しようということですね。

極端な例ですが、在庫状況を倉庫に確認しに行ったり、作業進捗を担当者に聞くことでも現状を把握することはできます。しかし倉庫に行って在庫が残りいくつか数えたり、担当者が今やっている作業を中断して管理表を開いて回答して……というようなことをやっている場合、業務全体の作業効率は落ちているといえます。

システム上で在庫状況や作業進捗が確認できるようになっていれば、知りたい人自らが素早くそれらを確認でき、全体の作業効率を上げられるのではないでしょうか。

近年RPAを活用して作業効率の改善を図る企業も増えてきました。その際に可視化を行えば現状を把握して課題を洗い出したり、RPAに任せる部分を切り分けることができます。

属人化を解消し、業務の水準を一定に保つため

その業務に関するスペシャリストがいれば作業はスムーズですが、一方で以下のようなリスクがあります。

  • 担当者不在時は業務をやり慣れていない人が担当するため効率が下がる
  • 目的や手順が明文化されていないと、引継ぎ時にかかる時間や手間が増え、引継ぎ漏れが発生しやすくなる
  • 業務の質が個人に依存しているため、担当が変わるたびに変動して安定しない

これらのリスクを回避するためには、マニュアルや資料を作成し手順を可視化することが有効です。

内部統制のため

内部統制とは、企業が業務を有効かつ効率よく行うために必要な仕組みであり、企業の全従業員で守るべきルールです。フローチャート・業務記述書・リスクコントロールマトリックスといった内部統制の3点セットを用意する際は、業務がきちんと可視化されている必要があります。

可視化によるメリット

続いて可視化を行うことによるメリットをご紹介します。

概要や全体像が把握できることで、個々の業務の効率や目的を意識できる

業務の概要や全体像を把握できないと今行っている作業がどの段階なのか、また作業の目的を意識するのは困難です。概要や全体像が可視化され把握できるようになっていれば、組織に所属する各個人にの業務の効率や目的を意識させ、組織全体のモチベーションを上げられるのではないでしょうか。

課題に対する気付きが得やすくなる

数字や文字が並んでいるだけの細かなデータひとつひとつ見て、データ間の関係を見出すことは時間がかかる上に難しいでしょう。それらのデータをグラフや図で視覚的に表すことで、傾向や差分や変化、ロジックの破綻している部分が見つけやすくなります。

情報を共有して共通認識が持ちやすくなる

データの羅列だけでは各人がさまざまな切り口でデータを見てしまい、データの解釈にもバラつきが出てしまいます。データを誰にでもわかりやすい形で可視化することで組織に共通認識を持たせ、方向性を統一させることができます。

意思決定スピードを早める

先述したように可視化したデータから各人が共通の認識を持つことができれば、課題に対する施策についての検討も素早く行え、意思決定を早めることが可能です。

可視化を行う上での注意点

可視化を行う目的を明確にし、課題の優先順位をつける

何でもかんでも可視化を行おうとするとやらなくてはいけない作業が増え、全体の作業効率がかえって悪くなることがあります。具体的に言うと必要のないデータまで資料に起こしたり、簡単な手順までマニュアルを作成したりしていると、他の優先すべき業務に使う時間が減ってしまいます。

また数字にこだわるあまりデータの詐称が起こったり、従業員のモチベーションにマイナスの影響を与えたりがないかも慎重に考える必要があります。

可視化を行うことで隠れていた課題や傾向を発見できる反面、次から次へと解決しなければならないことが出てくる可能性もあるため、目的を意識して課題の優先順位をつけることが大切です。

可視化するためのプロセスを複雑にしない

ビジネスの変革スピードは早くなっており、業務に求められることも日々変化しています。

その際、可視化はあくまでも目的に対する手段でしかないため、可視化を行うためのプロセスが複雑だといざ変更したい場合に時間がかかったり、修正が困難になったりすることがあります。

日々の業務に密接に関わるものであれば、なるべく柔軟に変更できるような仕組みになっていると「めんどくさい……」と淘汰されることなく活用され続けるのではないでしょうか。

データを可視化するツール

データを可視化するためのツールをいくつかご紹介いたします。

Excel(利用難易度★)

多くの人にとってなじみのあるExcelを使ってのデータの可視化は、それほどハードルが高くなく、導入の手間もあまりないため、実践しやすいでしょう。

ピボットテーブル機能を使えば、簡単に視覚的なグラフを作ることができます。また地図との連携も可能なので、地域ごとの売上データなどを地図上の棒グラフで確認することも簡単です。

その他にも多くの機能をあるため、初めてデータの可視化をする場合はExcelからスタートするのもいいかもしれません。

BIツール(利用難易度★~★★★)

BIツールはデータを有効活用して企業活動に役立てるために使われるツールです。

Excel同様、グラフやピボットテーブルなどでデータを視覚的に表現することができます。しかしExcelに比べて大量のデータを分析でき、使う人を制限できるという部分でメリットがあります。また製品によってはExcelよりも簡単に操作できるものもあります。

一方で製品によって想定しているユーザーが異なるため、「誰が使うのか」「対象者が使いこなせる難易度か」ということも考えながら製品を選ぶ必要があります。

目的を意識して、可視化するデータを決めよう

簡単にデータを可視化できるようになると、業務の意思決定にデータを用いるハードルも低くなります。

その一方で、何でもかんでも「可視化」することが目的となってしまうと、業務において余計な手間が発生してしまいます。

どんなデータを可視化して、それをどう生かしたいのかを考えた上で、可視化するデータを決めるようにしましょう。

\つまづく点を知って
失敗を回避!/
BIツール導入
成功のポイント
BIツール導入成功のポイント
BIツール導入時の失敗ケース別に、回避策や対処法、導入を成功させるためのポイントをご紹介しています。
資料内容
  • 第1章 そもそもBIツールとは?
  • 第2章 導入失敗ケースと対策/解決策
  • 第3章 導入を成功させるための流れ