ビジネスの意思決定を適切に行うには、データ分析の前に仮説を立てることが大切です。それにより、効率よく情報収集や検証作業に取り組めます。
この記事では、仮説を立てる目的やメリット、立て方の手順、また仮説を検証した結果、仮説が誤っていた場合の対処法についてご説明します。
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仮説とは
仮説とは、ある現象を合理的に説明するために、仮に立てる説です。現象を合理的に説明するためのものなので、立てた時点ではその説自体の真偽は重要ではありません。
しかし仮説は立てた後に検証を行うことで、その真偽を確かめます。そのため真偽を検証するための方法も合わせて考える必要があります。
仮説とデータ分析の関係
仮説はある現象や問題に対する考えや予想であり、データ分析は収集されたデータを統計的に解析することです。
仮説に基づいてデータを収集し、分析を行うことで、仮説が正しいかどうか、データから洞察を得ることができます。つまり、仮説はデータ分析の出発点であり、データ分析は仮説の検証や裏付けを行うためのツールだと言えます。
このように、仮説とデータ分析は密接に関係しています。
データ分析に仮説を用いる目的
仮説を用いたデータ分析全般の目的をひと言であらわすと、「正確性・信頼性の高い分析結果を得るため」だといえます。
ビジネスにおいては特に以下のような目的で、データ分析に仮説が用いられます。
ビジネスの課題を解決するため
企業が抱える問題点や改善すべき課題を特定し、有効な解決策を講じるために、仮説を立てて検証します。
例えば「販売促進活動を強化することで売上を増やすことができる」という仮説に対し、実際に販売促進活動に関する施策を実施し、効果を測定することで、仮説が正しいかどうかを検証します。
新たなビジネス機会の発掘・創出のため
市場の変化や新しい技術の出現などによって、新しいビジネスチャンスが生まれることがあります。そのような機会を発掘するために、市場調査や顧客ニーズの分析などを通じて仮説を考案し、新しいビジネスのアイデアを検討します。
データドリブンな意思決定を行うため
データを収集して仮説を検証する仮説検証実験を行うことで、データに基づいた意思決定が可能となります。
それにより感覚や経験に基づく意思決定よりも、より正確で客観的な結論を導き出すことができます。また仮説に基づいてデータを収集することで、問題や課題について深い理解を獲得し、より効果的な対策を講じることができます。
データ分析に仮説を用いるメリット
ビジネスにおけるデータ分析で仮説を用いるメリットとしては、以下が挙げられます。
課題や問題点を明確化できる
仮説を考える中で要点が整理され、課題や問題点をより明確に把握できるようになります。
またデータを収集し、分析することで、問題点や課題の根本的な原因を見つけ出すことができます。
データ収集や検証作業を効率化できる
収集するデータや、検証するべきことの優先順位がつけられるため、洞察における解像度を向上させることができます。
優先順位をつけることで、作業時間を最適化できるとともに、不要な情報によるノイズを減らすことで、意思決定の際の負荷を軽減することができます。
アイデア発見のきっかけになる
仮説をもとに情報収集・分析を行うことで、今までより詳しくデータを分析できるようになり、それまでは見落としていた情報を発見できる可能性が高まります。それにより、新たなビジネスのアイデアをみつけられる確率が高まります。
ビジネスのリスクを最小化できる
仮説検証実験を行うことで、実際に施策を実行する前に、ビジネスにおけるリスクを洗い出すことができます。それにより、ビジネスのリスクを最小化できます。
仮説の立て方
ここでは、「ある店舗の売上が低下した」という状況を例に、仮説の立て方を解説します。
Step1 考えられる原因を案出しする
まず最初に、発想を広げるために、考えられる原因をたくさん挙げていきましょう。文字で書き出していくほかにも、チームで話し合ったり、ChatGPTのようなツールを使ったりするのもいいでしょう。
3C分析(顧客・競合・自社)で整理しながら案出しを行うと、さまざまな観点から発想が広げられるのでおすすめです。
Step2 案出しした原因が適切かをチェックする
Step1で出された案を、全て細かく検証するのは困難です。
まず、出された案が以下の点を満たしているかチェックします。
- 根拠となる客観的なデータがあるか
- 不明瞭な点はないか
- 相関関係を因果関係としていないか
- 検証できる内容か
①根拠となる客観的なデータがあるか
特定の意見や個人の主観は仮説の根拠として適切なものではなく、偏見につながることがあるため注意しましょう。根拠が不足している場合は、データ収集を行う必要があります。
データを収集する際も、事前に収集方法や分析方法を適切に設計して、正確な測定を行うことが大切です。
データ収集の方法としては、例えば以下が挙げられます。
- 施策を行いながらデータを収集する
- 過去のデータを集める
- オープンデータや社外の調査資料を集める
②不明瞭な点はないか
例えば、「新しい競合店ができたことで、近隣のお客様がそちらを利用するようになり、当該店舗の売上が減少した」という仮説を立てたとします。
一見、仮説として良さそうに見えますが、以下のような点が不明瞭ではないか、裏付けとなるデータが存在しているかを確認する必要があります。
裏付けとなるデータがなく推測の域を出ない場合は、不明瞭な点に対し、①同様、データ収集を行う必要があります。
- 「競合店」が存在しているというデータはあるか
- どのような点で自社の店舗と競合しているのか
- 競合店と自社の店舗の客層は重なっているのか
③相関関係を因果関係としていないか
相関関係と因果関係はよく混同されてしまいますが、全く別の考え方です。仮説を立てる際は、相関関係を誤って因果関係として関係づけていないか、よく確認しましょう。
例えば売上と競合店舗数のデータから「売上と競合店舗数は反比例する」という相関関係に関する仮説は立てられます。しかし「競合店舗数が増加すると、売上が低下する」という因果関係に関する仮説を立てるには、顧客数の変化や、顧客数と売上の関連性などの観点が足りておらず、論理の飛躍が見受けられます。
④検証できる内容か
例えば売上低下の原因を「競合店が商品を値下げしたことで、当店の商品が高く感じられるため」とした場合、競合店が値下げを行ったという事実や、それによる顧客心理の変化を調べる必要があります。
しかし競合店に関する情報収集や顧客心理の心理変化の調査は、容易に実施できない場合も多々あります。
現在の人員や時間、資金といったリソースやスキルで実施できる検証内容か、よく検討することも重要です。
Step3 仮説立てを行う
チェックを行い、出された案の絞り込みができたら、表現を整理し、仮説立てを行いましょう。
その際、因果関係や根拠などの必要な要素を整理し、明確・簡潔に表現することが重要です。
「根拠となるデータがある」という前提で、「ある店舗の売上が低下した」原因に対する仮説の例を以下に挙げます。
- 新しく競合店がオープンし、近隣のお客様がそちらを利用するようになったため、当該店舗の売上が減少した
- 商品の品質が低下したため、リピート購入率が低下し、売上が減少した
- 当該店舗における接客態度が悪かったため、顧客満足度が低下したことで、リピート購入率が低下し、売上が減少した
Step4 仮説や調査の優先順位付けを行う
仮説が複数立てられた場合や、ひとつの仮説に複数の調査が必要な場合は、優先順位づけを行いましょう。
優先順位をつける際の観点の例としては、以下が挙げられます。
- 原因が結果にもたらす影響が大きいなど、重要度が高い
- 検証にコストがかからず、取り組みやすい
- データの信頼性が高い
調査する仮説や、調査自体の順位付けをすることで、効率よくデータ収集を行えます。
Step5 優先順位をもとに仮説を調査・検証する
データが収集できたら、仮説が正しいかを検証していきます。
例えば、根拠となるデータが存在するという前提で「新しい競合店ができたことで、近隣のお客様がそちらを利用するようになり、当店の売り上げが減少した」という仮説を立てた場合、以下のような観点での検証が考えられます。
- 競合店と自社店舗のターゲットが重複しているか
- 競合店の登場から、当該店舗の来店数と売上がどのように変化しているか
- 競合店の登場から、当該店舗の広告効果がどのように変化しているか
- 競合店の登場から、当該店舗の顧客満足度に変化はあるか
仮説の検証で大量のデータを分析する場合、BIツールを使うと効率よく分析できる上、結果の可視化・共有もしやすくなります。
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仮説が誤っていた場合の対処法
繰り返しになりますが、仮説は立てた時点ではその真偽を問わないため、検証を行うことで、仮説が誤っていた、となる可能性も大いにあります。
その場合は仮説が誤った原因を調査し、必要に応じて仮説の修正や、新たな仮説を立て、調査を行いましょう。
先述したように、適切な手順を踏めば、課題や問題点を明確化できたり、データ収集や検証作業を効率化できたりするのが、仮説を立てることのメリットです。
仮説の根拠を再評価する
仮説の前提条件が正確であるか、再度データの収集や分析を行って、再度評価しましょう。
検証方法を見直す
データの収集方法やデータの分析方法に問題がなかったか調査し、より適切な方法を探りましょう。
データから洞察を得るため、仮説を立ててデータを分析しよう
仮説立てと検証を繰り返すことで、データ分析の精度は徐々に高まっていきます。
そのためには自社にあった分析ツールを使用して、仮説立てやデータ分析を行う機会を増やしていくことも大切です。
仮説を立ててデータ分析を行うことを習慣づけ、ビジネスの意思決定に重要な洞察を手に入れましょう。