データマネジメントとは、読んで字の如く、「データを管理する」という意味です。
それでは、データがきちんと管理された理想的な状態とは、どのような状態でしょう?
また理想的な状態にすることで、得られる効果とは何でしょう?
この記事ではデータマネジメントの意味やメリット、実施する上でのポイントや事例などをご紹介します。
お役立ち資料「データマネジメント基礎知識」
データマネジメントとは
データマネジメントとは、ビジネスにデータを活用するべく、データの質や状態を維持し、進化させるための管理・運用を組織的に行うことです。
現代のビジネスの意思決定において、データは重要かつ不可欠です。
その一方で、データに関する以下のような課題はないでしょうか?
- 使いたいデータがどこにあるのかわからない
- データの保存ルールが曖昧
- 蓄積されたデータはあるが、意味合いがよくわからない
- システム検索のレスポンスが悪い
これらを解消するためには、データマネジメントを行うことが重要です。
データマネジメントの知識体系・DMBOK
DMBOKとは、Data Management Body Of Knowledgeの略称であり、データマネジメントに関する知識を体系立ててまとめた書籍のことです。
2009年に初版(DMBOK)、2017年には第二版(DMBOK2)、2024年には第二版改定新版(DMBOK2R)が出版されています(日本語版は2011年に初版、2018年に第二版、2024年に第二版改定新版が出版)。DMBOK2では、ビッグデータをはじめとした技術革新や、データマネジメント分野における発展に併せて大幅な拡張が行われました。
DMBOKは、情報およびデータ管理に関する理論と実践の促進を目的とした国際的非営利団体・DAMA International (Data Management Association International / 国際データマネジメント協会)によって策定され、日本にも「一般社団法人 データマネジメント協会 日本支部」という名称で支部があります。
DMBOKの知識領域
DMBOK2では、知識領域を以下のようにDAMAホイール図という形で定義しています。中心にデータガバナンスが置かれ、各知識領域は成熟したデータマネジメントに必要な機能を示しています。

出所:『データマネジメント知識体系ガイド 第二版』
DAMA International編著、DAMA日本支部、Metafindコンサルティング株式会社 監訳、日経BP
また、上記図には記載されていませんが、DMBOK2では他にも以下のトピックを扱っており、全17章構成で、各フレームワークを解説しています。
- データ取扱倫理
- ビッグデータとデータサイエンス
- 成熟度アセスメント
- 組織と役割期待
- 組織変革管理
データマネジメントのメリット
適切なデータマネジメントの実施によって、企業は以下のメリットを得ることができます。
データの取捨選択/整理がスムーズになる
基準なく何でもかんでも保存してしまうと、
「ここに入っているかもしれないけど、どんな状態でしまわれているのかわからない」
「とりあえずしまったけど、必要な情報が含まれているかわからない」
という事態に陥ってしまいます。
データの形式や保管の基準などルールを設けることで、データの質を保ちつつ、整理することができます。
必要なデータを素早く見つけられる
お客様にお話を伺うと、「データ活用するまでの準備に時間がかかる」というお悩みをお聞きします。
実は「データ分析は準備が8割」と言われるほど、データの準備に時間がかかります。
データマネジメントを行えば、準備時間を適切に削減し、データ検索を効率よく行えるようになります。
セキュリティ対策を適切に行える
顧客に関するデータなど、データの中には特に慎重に扱わなければならないものがあります。
またリモートワークの普及により、オフィス外で社内データを扱う機会が増えています。
センシティブなデータをきちんと把握しておけば、関係者しかアクセスできないようにするなどの対策が立てられます。
また万が一、情報漏洩などの事故が起こった場合でも、どのように保管・運用されていたのか把握していれば、迅速な対応が行えます。
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理想的なデータマネジメントの状態
基本的には以下の4つを満たした状態が理想的とされています。
- 欲しいデータがすぐに見つかる
- データ同士の関係性がわかる
- 管理のルールが周知されている
- 更新履歴がわかる
上記を踏まえた上で、自社における理想のデータ活用状況を具体的に想像できると、どう施策を進めていけばいいかがわかりやすくなります。
管理対象となるデータ
データマネジメントにおいて管理対象となるデータは、大きく分けて2つの種類があります。
ビジネスデータ
企業の業務に直接関係し、意思決定や業務遂行のために活用されるデータを指します。
データの正確性や可用性の向上を目的に管理され、データクレンジングやバックアップの作業が重要となります。
ビジネスデータの管理には、DWHやDBMS、BIツールなどが使用されます。
メタデータ
ビジネスデータを管理・活用するために、その内容や構造、関係性を記述したデータを指します。簡単に言い換えるならば、「データのためのデータ」とも言えます。
データ管理の透明性・活用の促進を目的に管理され、メタデータリポジトリの構築やデータリネージの可視化が求められます。
メタデータの管理には、データカタログやMDMツール、ETLツールなどが使用されます。
業務におけるビジネスデータとメタデータの例
どのようなデータにもそれに付随する情報があるため、メタデータが全く存在しないデータは基本的にありません。
そのため、例えば以下のように、業務ごとにビジネスデータとメタデータの例を挙げることができます。
業務 | ビジネスデータ | メタデータ |
---|---|---|
顧客管理(CRM) | 顧客情報
など |
など |
営業支援(SFA) | 商談データ
など |
など |
財務・会計 | 取引データ
など |
など |
データマネジメントに取り組む上でのポイント
データマネジメントを効果的に進めるには、以下のようなポイントを意識して取り組むことがおすすめです。
組織で取り組む
全社でデータを活用できる環境を目指すのであれば、組織での運用体制をつくることが必要です。
特に経営層の理解があると、データマネジメントを全社で推進しやすくなります。
また自社の業務に対する最大の理解者は自社の社員です。
データがどんな目的でどう使われているのか、社内で意味合いを共有するようにしましょう。
誰がどのようにアウトプットしたいのかがわかっていると、データベースやシステムの設計もやりやすくなります。
目的を明確にする
繰り返しになりますが、データ分析は準備に時間がかかります。
そのため一朝一夕でデータを活用する環境は作れません。
実施する意味を見失わないためにも、目的は明確にしておきましょう。
その際、データを使用するユーザーがデータやツールに対し、どの程度の知識やスキルを持っているのか把握しておくと、達成までのステップが考えやすくなります。
スモールスタートではじめる
組織で取り組む必要はあるものの、いきなり全社規模で行うのは大変です。
少人数で、なるべく小規模な範囲・システムから着手するとよいでしょう。
スモールスタートで知見を蓄積し、うまくいくようになったら徐々に対象範囲を広げていきましょう。
ビジネスにおけるデータ活用の機会がますます増え、重要になってきています。しかしその一方で、せっかく導入したBIツールを使いこなせず、「自社にBIツールはいらないのではないか…」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。[…]
データマネジメントの進め方
効率よくデータマネジメントを進めるためには、事前に計画を立てる必要があります。
ここではデータマネジメントの基本的な進め方を、具体的な手順に沿って解説します。

手順① 目的・目標を明確にする
データマネジメントは関わる人数が増えるにつれて、難易度も上がっていきます。
方針がぶれないよう、まずは自社における理想的な状態を具体的にイメージしましょう。そこから、プロセスを逆算することで、実現に必要な中間目標を定められます。
手順② 既存データを調査・整理する
社内にあるドキュメントを集め、内容が正確か、また情報に抜け漏れがないかを確認しましょう。
また、関係者にヒアリングを行って、直接状況を確認することも大切です。
手順③ DB/データの構成設計・ロードマップを作成する
手順①・②で集めた情報をもとに、DB/データの構成を設計し、実現するためのロードマップを作成します。その際、柔軟性や拡張性を考慮し、3~5年程度先まで使い続けられるような見通しを立てられると理想的です。
手順④ データマネジメントチームを結成する
データマネジメントは全社で行うのは簡単なことではありません。
各部署からデータマネジメントの担当者を立てるなど、データマネジメントの目的や現場の要望など、相互の意見がスムーズにやり取りできるようなチーム編成ができると理想的です。
手順⑤ 運用・メンテナンスを行う
用意が整ったら、ロードマップに従って運用を始めましょう。
目的やルールの周知徹底は重要である一方で、データの活用方法や見方は時間の経過とともに変化します。業務に合わせてデータが使い続けられるよう、メンテナンスは定期的に行いましょう。
データマネジメントの実践事例
実際にデータマネジメントを行うとどのような効果が得られるのか、弊社が携わったお客様の取り組み事例をご紹介します。
用途別に集計テーブルを作成し、検索レスポンスを向上
食品製造業を営んでいるこのお客様は、基幹システムから伝票に近い出荷データを使ってデータ活用を行っていました。
しかしデータのサイズや件数が膨大であったため、検索に時間がかかったり、場合によってはタイムアウトしてしまうことが課題となっていました。
そこで週報・月報など報告の単位に応じた集計テーブルを作成し、検索に必要な範囲を限定しました。
その結果、会議中にすぐデータを確認したり、データを活用して翌日の生産計画の立案がスムーズに行えるようになりました。

データ活用を行うための環境を整えよう
データ活用のためのツールは、世の中にたくさんあります。
しかし操作が簡単なツールを導入しても、ユーザーがデータの意味を理解していなかったり、
そもそものデータの質が悪かったりすると、データ活用はうまくいきません。
業務における新たな発見や意思決定、情報共有などをスムーズに行うための環境を整えるために、データマネジメントを実践していきましょう。