DXを成功させるには?課題解決策や推進事例をご紹介

日本企業のDXは着実に進行しています。しかしその一方でDX推進に取り組んでいるもののなかなかうまく進まなかったり、どう進めていけばいいか分からない、と悩んでいる担当の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

DX推進の課題として、不明瞭な経営戦略や人材不足、非効率なIT投資が挙げられます。

この記事ではDXを成功させるために、これらの課題の原因や解決策、また推進に必要なフェーズや取り組みの事例などについてご紹介します。

お役立ち資料「DXの進め方と成功のポイント」

そもそもDXとは何か

データやデジタル技術を活用し、競争上の優位性を確立すること

経済産業省が2020年11月に発表した「デジタルガバナンス・コード2.0」(旧 DX推進ガイドライン)に記載されている定義[※1]を確認すると、DXとはデータやデジタル技術を用いて製品やサービス、業務プロセスを改善し、競争上の優位性を確立するための手段、または確立された状態だと考えられます。

見方を変えると、今日のビジネスにおいて競争上の優位性を確立するには、データやデジタル技術の活用が必要不可欠であるといえるでしょう。

[※1]経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」(2020)P.1

着実に進行する日本のDX

独立行政法人情報処理推進機構が公開している「DX評価指標 自己診断結果 分析レポート」をみると、指標の平均値が大企業は前回と同等、中小企業は前回より下がっているものの2019年よりは高いことから、日本のDXは着実に進んでいることが分かります[※2]。

また回答数も2022年は大幅に増え、全業種でDX評価指標が活用されていることからも、日本企業においてDXに対する関心が高まっていると考えることができます。

[※2]独立行政法人情報処理推進機構「DX評価指標 自己診断結果 分析レポート(2022 年版)」(2023)P.13-23

DXを推進していない場合のリスク

経済産業省はDX実現ができない場合、2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があると提言しています[※3]。その要因には以下が挙げられています。

  • システムの保守/運用コストが高まる
  • 人材不足によるシステムトラブルやデータ滅失等のリスクが高まる
  • 全社横断的なデータ活用ができずデジタル競争に敗れる

DX推進には段階があるため、一気に進めることは困難です。そのため取り組んでいない場合は早急に着手し、地道にコツコツ進めていく必要があります。

[※3]経済産業省「DXレポート ~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~」(2018)P.26

DXを推進することによるメリット

市場における競争力の向上

データから顧客のニーズを詳細に把握できるような仕組みをつくれば、それらをもとに新たな価値の創出や顧客体験(UX)の質を向上させるための施策が考えやすくなります。またデータに基づいて市場における戦略を立てたり、振り返りを行うことは競争力を向上させるうえでも役立ちます。

業務プロセスの効率化

DXを推進するにあたり、業務プロセスの効率化は必要不可欠です。帳票作成やデータ連携など、単純な作業や定期的な効率化をすることで、今までと同じリソースで処理できる作業の量を増やしたり、それらの作業に使っていた時間をクリエイティブなことを考える時間に使えるようになります。

業務コストの最適化

レガシーシステムの保守管理業務や属人化している業務、手間のかかっている業務を見直すことで、それらに割いていた人員や時間といったコストを最適化することができます。

DX推進を阻む3つの課題と原因

DXの重要性は理解しているものの、日本企業においてDXが進まない原因としては以下が挙げられます。

DX戦略やビジョン、ロードマップが曖昧

DX推進のための仕組みが整っていない

DX推進がうまくいっていない原因の一つに、DX推進に必要な社内の仕組みを作れていないことが考えられます。そのため全社で取り組めず、部門内での部分最適化にとどまってしまっているケースも見受けられます。DXを達成にするには、IT基盤の見直しだけでなく、組織の整備や予算決定、人事評価の仕組みなども見直す必要があります。

手段が目的化している

この記事の最初の方でも書きましたが、「データやデジタル技術の活用=DX」ではありません。しかしトレンドワードであるDXを自社に取り入れようと考えた際に、どんな価値を創出するかではなく「AI を使って何かできないか」といった発想に陥っている場合も少なくありません。手段が目的化してしまっていると、目指すべき方向がぶれたり、リソースを無駄に消費したりしてしまうなど、様々な弊害を引き起こす恐れがあります。

将来に対する危機感が共有されていない

全社でのコミュニケーションがうまく取れていないことで、「自社でなぜDXを推進しなくてはならないのか」理由が伝わらず、DXに対するモチベーションがあげられない場合もあります。また当事者意識を持てないことで、現場から改善すべき課題が挙がってこないことも、DX推進の妨げとなってしまいます。

DX人材の確保・育成ができていない

教育体制が整っていない

そもそも教えられるだけの知識・スキルを持った人材がいないことに加え、学習の速度に対し技術が陳腐化する速度が速く、体制を整えるのが困難であることが原因として挙げられます。

DX人材不足による採用競争の激化

なかなかDX人材が確保できない背景として、DX人材を外部から採用しようとしても市場全体でDX人材が不足していることで採用競争が激化しているという状況があります。また確保できても市場全体で不足している状況は変わらないため、よい条件を提示し続けないとDX人材が流出してしまう可能性もあります。

IT投資ができていない

ITシステムがどうあるべきか、認識やビジョンが不明瞭

業務のためにITシステムがどうあるべきかビジョンがないと、IT投資の優先順位や計画を決めることができません。ITシステムに対するビジョンとしては、例えば以下のようなものが挙げられます。

  • リアルタイムでデータを確認できる
  • データを使いたい形で使える
  • システムが業務の変化に柔軟に対応できる
  • データが部門を横断して全社で活用できる

DX課題の解決策

DX推進状況や課題を全社で共有する

先述した「DX経営のための仕組みが定まっていない」という課題を解決するには、当たり前ですが仕組みを作っていく必要があります。簡単なことではありませんが、経営幹部や事業部門、DX 部門、IT部門といった社内の関係者が集まって認識の共有を図り、今後の方向性を議論することが、DXを達成するための活動として求められます。

DX推進状況や課題を全社で共有する際は、以下の参照・活用もおすすめです。

教育プログラムの整備

DX人材の獲得が難しい場合、自社での育成を検討しましょう。

組織内で計画を立てる際は、IT技術は陳腐化する速度が速いことを踏まえ、知識を教えるだけでなく、新しいことを柔軟に学ぶマインドを育てるための環境づくりを行っていくことが重要です。

また教育カリキュラムを検討・実施する際に外部のリソースを利用するという手段もあります。

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実現したいことを軸にIT投資の優先度を考える

教育のところでも触れましたが、IT技術の進歩は速く、新しいテクノロジーやツールが継続的に登場しています。仮にIT投資を行っていたとしても、短期的な視野で行われている場合、将来の技術に追随できなくなるリスクが高まります。そのためIT投資は自社が実現したい目標・ビジョンを踏まえて、長期的な視野をもって考える必要があります。

DX推進の流れ

DX実現までに経由するフェーズ

DXを実現するには、デジタイゼーション(digitization)、デジタライゼーション(digitalization)というフェーズを経由する必要があります。これらを経由してDXを実現しても、それはあくまでもプロセスの完成形のひとつでしかなく、DX実現後も思考を停止することなくよりよい形を追求していくことが求められます。

DX実現までに経由するフェーズ

デジタイゼーション

アナログの情報やプロセスをデジタル形式に変換し、業務や業務フローの一部をデジタル化するフェーズです。例えば紙ベースだった書類を電子化する、商談をオンラインで実施するなどが挙げられます。

デジタライゼーション

IT技術を活用しながら業務フロー全体を最適化していくフェーズです。デジタル技術やプロセスを導入することで情報や業務を効率的に管理したり、新たなビジネスモデルや価値を創造する活動などが該当します。

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各フェーズ内のプロセス

デジタイゼーションやデジタライゼーションのフェーズ、またDX実現後においてもPDCA(Plan/Do/Check/Action) は重要なプロセスです。課題を洗い出して計画を立て、実施するだけでなく、その後の振り返りによって次のアクションにつなげる、という一連のプロセスを繰り返すことで、課題を解消し、業務フローの最適化や意思決定プロセスの改善が可能となります。

DX推進の各フェーズ内でPDCAを回すことが、DXを推進する上で重要

DX推進のための取り組み事例

デジタイゼーションの事例

プッシュ型通知を活用した顧客対応の迅速化

ある企業では顧客管理システムにアクセスしに行かないと顧客に関する最新の情報を手に入れられず、顧客へアプローチするチャンスを逃してしまったり、「情報を見に行かなければならない」ことが業務における手間になっていました。そこで顧客管理システムの最新情報を社内SNSにプッシュ通知することで、業務の手間を軽減するとともに、顧客へのアプローチのチャンスを逃さず、迅速に対応できるようになりました。

予約受付業務の効率化

この大規模総合研修施設では施設予約の手段が多く、またホワイトボードでの状況連携や手作業での作業といったアナログ管理を行っていたため、ミスを誘発するリスクが高いことや管理の手間が多いことが課題となっていました。そこでデータを一元管理できるよう、デジタルデバイスを活用したデータ入力によってデータをリアルタイムで共有し、煩雑な業務を解消するとともに、BIツールでデータを分析することで現行業務の効率化や戦略的な研修計画の立案をデータに基づいて行えるようにしました。

デジタライゼーションの事例

業務に適したシステムに刷新し、売上分析結果から最適な生産量を判断・依頼

この企業では業務に対し生産管理システムが最適化できておらず、業務効率に課題がありました。そこで業務に適したシステムに更新することで、生産実績のデータから進捗を確認したり、出荷や売上の推移のデータをもとに工場に依頼する生産量を判断できるようになり、業務を効率的に行えるようになりました。

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全社でDXに対する共通認識を持ち、段階的にDXを推進しよう

DXが「デジタル革命」である以上、実現されればそのインパクトは絶大であると想像できます。しかしDXを成功させるためには、全社でビジョンや目標を共有し、社内で協力しながら課題に取り組んでいく、という地道な活動が必要です。全社でコミュニケーションをとりながらPDCAを効率よく回すことで、DXをコツコツと段階的に進めていきましょう。

お役立ち資料『DXの進め方と成功のポイント』ではより具体的にDXを実現するためのPDCAについて解説しています。ご興味のある方はぜひ以下からダウンロードしてみてください。

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DXの進め方と
成功のポイント
DXの進め方と成功のポイント
DX推進に課題を感じている方に向けて、DXの進め方、課題対策、成功の鍵を事例付きでご紹介しています。
資料内容
  • DXとは
  • 実現までの流れ
  • 成功のポイント
  • 計画と進め方のコツ
  • 最適なツールを選定するためのポイント
  • 事例(DX/データ活用/人材育成)