ITリテラシーとは?社員のITリテラシーを強化し、企業価値を高めよう

オフィスや自宅、PCやタブレット、スマートフォンなど、環境やデバイスの垣根なく、ITツールやインターネットを使うことが昨今のビジネスでは当たり前になっています。そのため、企業においてITリテラシーに関する知識を適切に身に着け、向上させることはとても大切です。

今回は「ITリテラシー」とは何か、その意味や重要性、低い場合のリスク、向上させるメリットや方法などについてご紹介します。

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ITリテラシーとは?

ITリテラシーとは、通信・ネットワーク・セキュリティなど、IT関連サービスや機器、テクノロジーについて理解し、それらを操作する能力のことです。

元々は1970~80年代のアメリカで、図書館を利用して課題解決に必要な文献を見つけ出し活用する能力として提唱された「図書館リテラシー」(library literacy)から発展したものとされています。

1990年代以降、個人のコンピュータ利用やインターネット、携帯電話などによるデジタル化された情報の流通・受発信が一般化し、こうしたデジタル機器やネットワークを通じて情報を取得・活用するという意味で利用されるようになりました。

なぜITリテラシーの向上が重要なのか

ITリテラシーは時代とともに変化する

ITリテラシーを学ぶ上で重要なのは、ITリテラシーは時代とともに変化する、という点です。

どのように変化しているのか理解するために、少し前の情報になりますが、2017年に総務省が発表した「平成29年版 情報通信白書」をみてみましょう。

まず、第1次産業革命では、家畜に頼っていた労力を蒸気機関など機械で実現した。第2次産業革命では、内燃機関や電力で大量生産が可能となった。第3次産業革命では、コンピューターの登場でデジタルな世界が開き、IT・コンピューター・産業用ロボットによる生産の自動化・効率化が進展した。第4次産業革命は、現在進行中で様々な側面を持ち、その一つがデジタルな世界と物理的な世界と人間が融合する環境と解釈している。具体的には、すなわちあらゆるモノがインターネットにつながり、そこで蓄積される様々なデータを人工知能などを使って解析し、新たな製品・サービスの開発につなげる等としている。

総務省「平成29年版 情報通信白書」(2017)第3章「第4次産業革命がもたらす変革」P.107

第3次産業革命で登場したコンピュータが、第4次産業革命ではIoTやAIなどの技術の発展にともない、より複雑化・高度化していることがわかります。

また新型コロナウイルス流行前と比べ、リモートワークやネットショッピングの利用も増加しています。

このように、以前に比べてITに関する技術が複雑化・高度化した分、私たちの身の回りでIT技術を利用する機会が増えていることから、ITリテラシーを向上させることが重要だと考えられます。

技術の発展にともない、求められるITリテラシーは時代とともに変化する

ITリテラシーを構成する3つの要素

ITリテラシーは大きくわけて下記3つから構成されています。

  1. 情報基礎リテラシー(情報の収集、精査、活用)
  2. コンピュータリテラシー(PC活用能力)
  3. ネットワークリテラシー
ITリテラシーを構成する3つの要素。情報基礎リテラシー、コンピュータリテラシー、ネットワークリテラシー

情報基礎リテラシー(情報の収集、精査、活用)

その名の通り、インターネット上から正しく有益な情報を見つけ出す能力です。

今やWebサイトやSNSなどには追いきれないほど無数の情報が溢れており、なかにはフェイクニュースと呼ばれる嘘の情報もたくさん紛れています。

膨大な情報の中にあるフェイクニュースに騙されることなく、自分や自社にとって必要で有益な情報を見つけ出すのが情報リテラシーです。

何か調べる際、どのようなキーワードを組み合わせれば適切な情報にたどり着けるのか、その中で信用できる情報を見極める力も情報リテラシーと言えます。

コンピュータリテラシー(PC活用能力)

コンピュータリテラシーとはコンピュータなどの各種IT機器を操作する技術、あるいは知識を意味しています。

業務でパソコンを全く利用しない会社はほぼないでしょう。最低限のコンピュータリテラシーは業務によって異なるものの、キーボードやマウスの操作に関する理解は、ほとんどの企業で求められると思います。

Word・Excel・PowerPointといったOfficeツールを使用できることを採用の条件としている企業も少なくないでしょう。

さらに専門的な現場では、特定のプログラミング言語を読み書きする能力を最低水準としている場合もあります。

また特定の業務で必要になる専用のツール(会計システム、ERP、CRM、BI、etc…)を使用するための知識もここに含まれます。

ネットワークリテラシー

ネットワークリテラシーとは、ネットワークやセキュリティに関する技術的な知識を理解する能力のことです。

近年では「インターネットの正しい使い方」や「インターネットを利用する上でのモラル」の意味でも用いられているそうです。

SNSが普及している今日ではSNSでの発言が取り返しのつかない事態に発展するリスクも十分考えられるため、全てのユーザーが理解し、身につけておくべき能力です。

ITリテラシーが低い場合のリスク

ITリテラシーが低い場合に引き起こされるリスクとして、以下の5つが挙げられます。

以下に対し適切な対策を講じなければ、最終的に企業価値の低下を招く原因にもなりかねません。

  1. セキュリティインシデントの発生
  2. 生産性の低下
  3. 情報収集力の低下
  4. 業務の属人化
  5. ネットの炎上
ITリテラシーが低い場合に起こりうるリスク

セキュリティインシデントの発生

セキュリティインシデントとは、セキュリティ上の脅威となる事象のことです。具体的には、マルウェア感染や不正アクセス、情報漏洩などが挙げられます。

発生を防ぐには、スパムメールの添付ファイル開封やURLへのアクセス、USBを使った情報の持ち出しなどが、不適切な行動として周知されている必要があります。

生産性の低下

社内における生産性が毎年維持されていても、競合企業がIT技術を取り入れて業務の効率化を進めていた場合、他社に比べて生産性はどんどん低くなっていってしまいます。

少なくとも世の中にどんな技術が広まっているのか、また自社の生産性向上に役立ちそうなものがないか、課題意識をもって情報収集を行い、習慣化するのがおすすめです。

情報収集力の低下

商品やサービスの開発・質の向上を考えるにあたり、顧客ニーズの把握は必要不可欠です。その際、自社が持つ情報やインターネット上に存在する情報を集める必要があります。

情報収集力が低いと、DBからデータを抽出するためのPC操作や検索キーワードの設定がうまくできず、必要な情報を集められなかったり、集めた情報が本当に正しいものか見極めることが難しくなってしまいます。

業務の属人化

ITリテラシーの中でもコンピュータリテラシーが低く、PC操作が苦手な社員が多い場合、得意な人にPC関係の業務が集中してしまう、という事態はないでしょうか?

「情報システム部門にデータ抽出や帳票作成の依頼が集中し、本来のシステム保守の業務に割ける時間が少ない」
「社内にPCが得意な人がいないからベンダーに依頼しているが、データが手に入るまでの待ち時間が長い」
というお悩みをお客様からいただくことがあります。

このように業務が属人化してしまうと、一部の人の負担が高まったり、組織全体の業務効率の低下を招いてしまう可能性があります。

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ネットの炎上

企業ブログやSNSによる情報発信は、ブランディングやマーケティング活動における一般的な手段となっています。

しかしネットワークリテラシーが低い場合、モラルの欠如や不用意な発言によって、炎上を招いてしまうことがあります。

ITリテラシーの向上によるメリット

ITリテラシーを向上させることは、企業価値の向上にもつながります。

ここではメリットを3つ、ご紹介します。

  • 生産性が向上する
  • 商品やサービスの質が向上する
  • 大切な情報を守れる
ITリテラシーを向上させるメリットをひと言であらわすと、企業価値の向上がある

生産性が向上する

社員のITリテラシーが高いと、業務効率改善のアイデアも出やすく、また改善作業も行いやすくなったり、それらの提案も抵抗なく受け入れやすくなります。

また生産性向上のために導入した各種ITツールがもつ本来のポテンシャルや効果が引き出しやすくなったり、属人化を解消したりすることにもつながります。

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商品やサービスの質が向上する

ITリテラシーを向上させることで、業務や施策に必要な情報を、適切に集めることができます。

市場の動向や顧客ニーズに関する質の高い情報を集め、商品やサービスに反映できれば、それらの質や顧客の満足度をより高めることが可能です。

大切な情報を守れる

ITリテラシーを高めれば、自社で取り扱っている商品やサービス、顧客などの情報やデータの重要性や、業務へどう関係しているのかを把握できます。

その結果、システムに対し情報漏洩を防止する策を講じたり、情報漏洩につながる行動をしないなど、セキュリティへの意識が高めることができます。

ITリテラシーを高める方法

ITリテラシーを高めるためには、学ぶ機会と実践する場が必要です。

ここでは3つの方法をご紹介します。

  1. ITリテラシーに関するセミナー/研修などの実施
  2. IT関連試験の受験
  3. ITツールや最新技術に触れやすくなるよう、環境を整える
ITリテラシーを向上させるには、学ぶ機会と実践の場を用意する必要がある

ITリテラシーに関するセミナー/研修などの実施

ITリテラシーを高めるためにはもちろん日々の業務の中で指導していくことも大切ですが、社員全員がITリテラシー教育を受ける機会を設けることが有効です。

新人研修の中にITリテラシーに関するプログラムを用意している企業もあるかと思います。

業種的に直接かかわる部分が少なかったとしても、ITリテラシーが求められる状況は常に変化していきます。一回の実施で終わらせず、部門や役職ごとで定期的に研修機会を設けることがさらなるITリテラシーの向上につながるのではないでしょうか。

具体的な方法としては、書籍やWebサイトから情報を取得し学習することに加え、現在はWebセミナーやeラーニングなどでITリテラシーに関して学習することができます。

カリキュラムはユーザー部門向けや管理者向け、IT部門向けなど、ご自身の会社の学習者に合う内容を選ぶことが重要です。

パッケージ製品を扱っている企業が製品の利用方法についてのセミナーを開催したり、eラーニング動画を公開していたりすることもあります。

IT関連試験の受験

IT関連の試験に向けて勉強することで、知識やスキルを体系的に習得できます。

例えば、国家試験としては以下があります。

  • ITパスポート試験
    • 職業人及びこれから職業人となる者が備えておくべき、ITに関する共通的な基礎知識をもち、ITに携わる業務に就くか、担当業務に対してITを活用していこうとしている人が対象
  • 情報セキュリティマネジメント試験
    • 情報システムの利用部門にあって、情報セキュリティリーダーとして、部門の業務遂行に必要な情報セキュリティ対策や、組織が定めた情報セキュリティ諸規程(情報セキュリティポリシーを含む組織内諸規程)の目的・内容を適切に理解し、情報及び情報システムを安全に活用するために、情報セキュリティが確保された状況を実現し、維持・改善する人が対象
  • 基本情報技術者試験
    • ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた人が対象
  • 応用情報技術者試験
    • ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に必要な応用的知識・技能をもち、高度IT人材としての方向性を確立した人が対象
参考:独立行政法人情報処理推進機構 試験区分一覧

ITツールや最新技術に触れやすくなるよう、環境を整える

社員のITリテラシーを向上させるためには、単に知識を身に着けさせるだけでなく、ITツールや最新技術に触れやすい環境を整えることが必要です。

学んだITリテラシーの知識を実践できる身近な環境があれば、ITリテラシーの必要性や重要性が体感しやすくなります。

社員のITリテラシーを強化し、企業価値を高めよう

企業活動にIT技術が深くかかわっている以上、ITリテラシーは重要かつ不可欠なものです。時代とともに変化していくものである以上、社員にITリテラシーの重要性を理解してもらう必要があります。

企業の価値を高めていくためにも、ITリテラシーについて学ぶための環境や機会を提供し、社員のITリテラシーを強化していきましょう。

以下の資料では弊社とお客様が行った教育に関する事例をご紹介しています。ITリテラシー強化に伴う学習環境・機会提供の参考になれば幸いです。

\実践事例付き!/
BIツール活用のための
ユーザー教育ガイド
ユーザー教育事例集
データ活用の促進に重要なユーザー教育について、失敗してしまう要因を解説し、効果的なユーザー教育を実施するための進め方や実践事例をご紹介しています。
資料内容
  • 第1章 BIツール活用のためのユーザー教育とは
  • 第2章 ユーザー教育が失敗する2つの要因
  • 第3章 ユーザー教育の進め方
  • 第4章 ユーザー教育実践事例