データ利活用を推進するにあたり、「社内にどんなデータがあるのか分からない」、「必要なデータが見つからない」といった課題にお悩みの方も多いのではないでしょうか。この悩みを解決する手段として、近年注目を集めているのが「データカタログ」です。
本記事では、データカタログの定義から役割、解決できる課題、活用事例、そして運用のポイントまでをわかりやすく解説します。
データカタログ製品・DataHarborサービス資料
データカタログとは
データカタログとは、組織内に散在するさまざまなデータのメタデータ(データに関するデータ)を集約し、一元管理するための仕組みです。データベース・ファイル・BIツールなどにまたがるデータ資源を、データ構造や属性ごとに整理・分類し、「誰が・どのような目的で・どのデータを使えるのか」をわかりやすく可視化します。
データカタログを用いることで、ユーザーは目的のデータにすばやく辿り着けるようになり、その結果、業務スピードと質の向上が期待できます。
このようにデータカタログは、組織全体のデータ活用を支える基盤として、あらゆる部門を支援します。
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データカタログの役割
データカタログは、企業内に散在するデータの整理・可視化・共有を通じて、部門横断でのデータ活用を促進する役割を担います。単なるデータの一覧表ではなく、データガバナンスやデータマネジメント、さらには業務部門の自立的なデータ活用を支えるための、信頼性の高い情報を安全かつ効率的に提供します。ここでは、データカタログの3つの役割をご紹介します。
役割①:データガバナンスにおける「見える化」の支援
どのようなデータが、どこに、どのような形式で存在するのかを可視化し、統制の効いたデータ運用を可能にします。これにより、重複データや不明確なデータ利用を防ぎ、セキュリティやコンプライアンスの観点からも健全な状態を保ちます。
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役割②:データマネジメントの「実行基盤」
データの説明や責任者、更新頻度といったメタ情報を一元的に管理することで、利用者は信頼性のある情報にもとづいて、自律的に判断・分析ができるようになります。これは、属人化の防止やナレッジの継承といった観点でも大きな効果を発揮します。
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役割③:業務部門の自立的なデータ活用を促す
データカタログによって、利用者が自身の業務に必要なデータにすばやくアクセスできるようになれば、問い合わせや確認作業にかかる手間を削減できます。これらは情報システム部門の負担軽減にもつながります。
また、業務ユーザー同士がデータ業務のナレッジをシェアできる機能をもった製品もあります。
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データカタログで解決できる課題
データカタログは、企業内のデータの所在や、データの意味がわからないといった課題を解決し、情報システム部門・業務部門双方にメリットをもたらします。ここでは、それぞれの立場におけるメリットをご紹介します。
情報システム部門にとってのメリット
データに関する問い合わせ対応の削減
データの意味や定義、使い方がカタログ上で確認できることで、業務部門からの問い合わせ件数が大幅に減少できます。これにより、情報システム部門が本来注力すべき業務に、リソースを割けるようになります。
属人化していた知識の共有
データの取得方法や注意点など、これまで特定の担当者しか把握していなかった暗黙知を、データカタログを通じて可視化・共有できます。これにより、担当者の異動や退職による情報の断絶を防ぎ、継続的な運用が可能になります。
ガバナンスとセキュリティ管理の効率化
どのデータがどこに存在し、誰がアクセスできるかといった情報が整理され、統制がとりやすくなります。また、アクセス権限の管理やデータ利用状況の把握も容易になり、セキュリティポリシーの遵守や監査対応もスムーズに行えるようになります。
業務部門にとってのメリット
「使いたいデータ」がすぐ見つかる
日々の業務では、必要なデータを探すこと自体が一つの負担となっています。データカタログを活用すれば、業務部門の担当者自ら、目的のデータをすばやく検索・発見できるようになります。検索性や分類の工夫により、煩雑なフォルダ構成や属人的な情報共有に頼らずとも、使いたいデータにたどり着ける環境が整います。
意味や注意点が分かり、データの誤用が減る
データ項目に定義の説明や活用時の注意事項などが記載されていれば、業務部門のメンバーもデータを正確に理解しやすくなります。例えば「売上」の定義や「除外対象」の有無など、判断を誤ると分析結果に影響するような重要な情報を確認できるようになります。これにより、不正確なレポート作成やミスのリスクを抑えることができます。
データの疑問を自己解決できる
業務ユーザーがデータの意味や使い方が分からない場合、情シスや分析担当に都度問い合わせることがほとんどではないでしょうか。データカタログは、あらかじめ整理されたナレッジを閲覧できるため、多くの疑問をユーザー自身で解消できます。有識者への問い合わせが減ることで、業務のスピードが上がり、部門間のコミュニケーションコストも削減されます。
データカタログの活用例
それでは、データカタログは業務にどう用いることができるのでしょうか?ここでは、情シス・業務部門におけるデータカタログの活用例をご紹介します。
情報システム部門:データの所在に対する問い合わせ対応時間を削減
情報システム部門には「どのデータがどこにあるのか」といった問い合わせが日々寄せられていました。特に、法務・営業・経理など複数の部門が関与する契約情報は、似たような質問が繰り返し寄せられ、本来の業務を圧迫する要因となっていました。
そこで、データカタログに契約管理システムのマスタデータを登録し、「契約ステータス」や「解約フラグ」など、各項目に定義や説明、また、用途や使う際の注意事項などを記載しました。さらに、ユーザーが探しやすいよう、「契約情報」や「顧客管理」など、利用目的に合わせたタグを付与しました。
このように、データカタログを用いてナレッジを共有しやすくすることで、情報システム部門の業務の効率化とストレスの軽減が可能です。
業務部門:情シスに依頼せずとも、自部門で宛先リスト作成を完結
新製品リリースにあたり、マーケティング部門では既存顧客に向け、クロスセルのためのメール案内を検討していました。しかし、どのデータを使えば「現在契約中の顧客」を判定できるのかが分からなかったため、データカタログで「契約」などでキーワード検索を行い、目的に合ったデータを調べて宛先リストを作成しました。
このように、データカタログを用いると、依頼や確認の手間をかけずに、自部門だけでタイムリーな施策実行が可能です。
データカタログを活用するためのポイント
データカタログを導入しただけで、データ活用環境が改善されるわけではありません。段階ごとに、活用するためのポイントが存在します。ここでは、導入前・導入時・導入後の3つのフェーズに分けて、ポイントをご紹介します。
導入前:目的と対象を明確にする
データカタログを導入する前にまず重要なのは、「なぜ必要なのか」を自社の課題に即して明文化することです。例えば、「契約情報に関する社内の問い合わせ対応に時間を取られ、本来業務が圧迫されている」といった具体的な課題を洗い出し、それを解消する手段としてデータカタログを位置づけることで、導入の目的が明確になります。
あわせて、対象とするデータとその範囲も整理しておきましょう。この段階で対象範囲を定めておくことで、設計や運用がスムーズになり、利用効果も測定しやすくなります。
例)
- 契約情報に絞って情報源を洗い出す or 他のマスタ情報にも広げる
- 部署横断で活用する or まずは一部門に限定
導入時:スモールスタートで現場と一緒につくる
導入の際は、いきなり全社展開を目指すのではなく、スモールスタートから始めるのがおすすめです。特定の部門や限られたデータ領域に絞って試行し、運用ルールや活用イメージを現場と一緒に整えていくと、形骸化を防ぎながら自社に合った運用モデルを構築できます。
また、「誰がどのメタデータを記述・管理するのか」も明確にしましょう。記述が属人化したり、役割が曖昧になったりすると、更新が滞り、活用されないツールになってしまいます。可能であれば、現場の担当者やデータのオーナーを巻き込みながら、実務に即した記述ルールと責任の分担を検討・設計しましょう。
さらに、アクセス権限やセキュリティ設定も、初期段階から意識しておく必要があります。全ユーザーが全情報にアクセスできる状態は、情報漏えいや誤解を招くリスクが高いです。誰がどのデータにアクセスできるのが最適か、閲覧と編集の範囲をどう分けるのかを明確にし、安全かつ円滑な運用を心がけましょう。
導入後:利用を促進し、運用ルールを定着させる
繰り返しになりますが、データカタログを導入しただけでは、期待する効果を得られません。ユーザーが自然に活用できるような導線をつくることが重要です。たとえば、業務システムや社内ポータルからのリンク設置、定期的な利用促進キャンペーンやトレーニングの実施など、アクセスしやすい環境づくりを心がけましょう。
さらに、利用状況をKPIとして定量的に把握し、定期的な振り返りを行うことで、課題や改善点を早期に発見しやすくなります。利用率や検索回数、問い合わせ件数の変化などをモニタリングし、運用状況に応じた施策を展開しましょう。
そして最も重要なのは、「データカタログを使う」ことが当たり前の文化を社内に根付かせることです。経営層や現場リーダーの理解と支援を得て、成功事例を共有しながら、社員が自発的に活用する環境を醸成していくことが運用定着につながります。
データカタログでデータ利活用を推進しよう
データカタログは単なるデータの棚卸しツールではなく、データ活用を組織に根付かせるための基盤となる存在です。ぜひ自社にとっての目的と課題を明確にし、スモールスタートで「使われるデータ基盤」の構築に着手してみてください。
弊社では、データカタログ製品・DataHarborを扱っています。ご興味のある方はぜひ、以下からサービス資料をダウンロードしてみてください。