売上分析を最適化!目的別にフレームワークをご紹介

ビジネスを行う以上、売上分析は必要不可欠です。しかしどのように売上分析を行えば効果的なのかがよくわからず、ただデータを出して数字を追うだけになってしまうことも多いのではないでしょうか。

この記事では売上分析の目的やメリットを確認した上で、売上分析を行う手順や目的に合わせたフレームワーク、売上分析に使えるツールや活用事例をご紹介します。

売上分析とは

売上分析とは、売上に関するデータを分析することで自社の営業のパフォーマンスや売上の動向を理解し、ビジネスの成果を最大化するためのプロセスです。

言い換えると、売上分析は売上に対する理想と現実のギャップを埋めるために必要な手段といえます。

そのため単に売上金額などの数値を出すだけではなく、さまざまなデータを分析し、効果を最大化するための戦略を策定する必要があります。

売上分析は売上に関する理想と現実のギャップを埋めるために必要な手段といえる

売上分析の目的

売上分析を行う目的は、現状把握課題解決のための目標設定です。自社の現状を把握することで、はじめて売上に対する課題を特定でき、かつそれらの課題を解決するための目標設定が行えます。

記事の冒頭でも触れたようにただデータを出すだけだったり、分析して終わってしまっていては、売上の改善は見込めません。また経営層や営業管理職の方にとっては、売上戦略に対してリソースを適切に配分するためにも、売上分析が非常に重要です。

現状を把握し、課題解決のための目標設定を行うために、売上を分析する」という目的意識を持って取り組みましょう。

売上分析を行うメリット

目標達成に必要な要素を把握できる

目標達成にはゴールであるKGIの他、途中目標となるKPIの設定が必要です。設定した目標と実際の売上の比較によって、売上の伸び率や達成度合いを定量的に把握し、目標に対する進捗状況を把握できます。

また目標達成に寄与する要素を明らかにすることで、成功要因に着目した戦略や施策を展開できます。

営業戦略を改善できる

売上に影響を及ぼすボトルネックの発見の他、自社の独自性を打ち出し、他社との差別化を図ったり、売上の上位商品や需要の高い市場セグメントに対してリソースを割くことで、営業活動の効果を最大化することができます。

市場の動向を把握できる

売上の増減や商品・サービスの購買パターンの変化を分析することで、自社商品・サービスの市場におけるニーズや購買チャネルの変化といった需要動向を把握することができます。分析が新たな市場の発見につながることもあるでしょう。

また競合他社に関するデータを分析することで、自社の位置づけや競争力の把握に役立ちます。

顧客行動の理解につながる

顧客行動や購買パターンが把握できれば、購買に至るまでの導線を改善したり、ニーズに合った商品・サービスを必要なタイミングで提供したりするなどして、顧客の満足度やロイヤルティの向上に貢献できます。

売上予測の精度が向上する

自社の売上や市場動向などのデータを分析することにより、データに基づいた売上予測が可能になります。また売上を予測することは、リソースの適切な配分につながります。

例えば繁忙期と売上増加の時期が一致している場合、その時期に合わせて人員を補充したり、多めに生産を行って在庫を確保する、などといった計画が立てられます。

売上分析の手順

①目的設定

まず最初に売上分析を実施する目的を明確にしましょう。

「売上分析の結果を用いて何をしたいのか」を考えることで、どのようなデータを集めればよいのか、どのような分析手法を用いればよいのかが明確になります。

また具体的に目的を設定することで、チームでの共有や、指標・進捗などのモニタリングも行いやすくなります。

②データ収集

次に①で設定した目的を実現するために、必要なデータを収集しましょう。

目的によっては社内にすでに蓄積されたデータ(売上や顧客、商品などに関する内部のデータ)の他に、社外からデータを収集した方がいい場合もあります(市場や競合、経済指標などに関する外部のデータ)。

社外からデータを収集する方法としては、アンケートや調査会社の利用、ツールを利用した自動収集などがあげられます。

データを収集する際は、効率よく分析できるよう、またデータの質や状態を保てるよう、管理のルールや環境、体制が整っていると理想的です。

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③データの整理・クレンジング

売上分析を行うために充分な量のデータが収集できたら、データの整理・クレンジングを行いましょう。

データの整理ではデータを適切な形式(テーブル、スプレッドシートなど)に整形し、必要なデータを抽出・統合します。データのクレンジングでは欠損値や異常値の処理、重複データの削除、データのエラーチェックなどを行うことで、データの品質を向上させます。

②と並行して実施することも可能なため、効率の良いやり方で行いましょう。

④データ分析

データの整理・クレンジングが完了したら、いよいよ分析です。
目的に応じて適切なフレームワークを用いて、データから洞察を引き出しましょう。

フレームワークの詳細は「目的別!売上分析のフレームワーク」をご覧ください。

⑤戦略策定およびレポート作成・報告

データを分析し洞察を引き出したら、最終的にレポートや報告書としてまとめましょう。

売上分析結果を効果的に報告するために、以下のポイントを参考にしてみてください。

  • 売上分析の結果とそれを踏まえた今後の施策を端的にまとめ、資料の冒頭に記載する
  • なぜそのような分析結果になったのか、実施した施策が数値にどのような影響を与えたのかを可視化する
  • 今後の施策を提案するにあたり、根拠を示しながら論理的に説明する

目的別!売上分析のフレームワーク

目的別に分析の結果を詳細にしていくような順番でフレームワークをご紹介しています。

どの目的でも最後に因子分析を扱っていますが、因子分析とは多数の変量データの背後にある共通因子を明らかにしようとする手法であることから、さまざまな場面で用いることが可能なためです。

顧客や商品のセグメンテーションを行いたい

例えば「顧客や商品のセグメンテーションを行いたい」場合、以下のような流れが考えられます。

  1. 顧客ごとの売上を集計し、売上の重要度に基づいて顧客や商品を分類(ABC分析)
  2. 売上順に顧客を並べ、売上の偏りや集中度を把握(デシル分析)
  3. 顧客の最新購入日からの経過時間、購入回数、購入金額をもとに顧客をセグメント分けし、顧客の購買パターンを把握(RFM分析)
  4. 共通の要素や特性を把握するために、顧客や商品を分類(因子分析)

①ABC分析で売上の重要度を区分

ABC分析とはデータを上位から順にABCのグループに分け、構成比率を分析する手法です。上位のグループに着目することで、売上の大部分を占める重要なセグメントを特定します。

例えば売上額を重視して商品・サービスをABC分析する場合、以下のようなグループ分けが行われます。

  • Aグループ
    • 売上額の上位70%を占める商品・サービス
  • Bグループ
    • 売上額上位71%から90%に位置する商品・サービス
  • Cグループ
    • 残りの部分を構成する商品・サービス
ABC分析ではデータを上位から順にABCのグループに分け、構成比率を分析

②デシル分析で売上の偏りを把握

デシル分析は顧客を売上高や利益などの指標に基づいて並び替えて10等分し、各グループ(デシル)ごとに値を算出・比較することで、顧客を分析するフレームワークです(「デシル/decile」はラテン語の「decimus/第10の」に由来)。

各グループの値を比較し、売上への貢献度が高いデシルや対策が必要なデシルを特定することで、売上の格差がどのように生じているかを把握します。これにより貢献度の高いデシルへ注力するなど、優先順位の設定やリソースの配分を考える際の判断材料にすることができます。

デシルごとに算出する値の例としては、以下が挙げられます。

  • 各デシルごとの売上高
  • 各デシルごとの売上高比率
  • 各デシル一人あたりの売上高
デシル分析はデータを10等分し、各デシルを比較することで注力すべきデシルを特定する

③RFM分析で顧客の購買パターンを区分

RFM分析では最新購入日(Recency)、購入頻度(Frequency)、購入金額(Monetary)を指標に顧客をグループに分けることで、顧客の購買パターンを把握します。これにより顧客の購買パターンに応じた施策が検討できます。

例えば最近商品の購入をしておらず、購入頻度も高くないグループに対して、キャンペーンを打ったりメルマガを送付するなどの施策が考えられます。また購買頻度は高いものの、購入金額が低いグループに対しては、他の商品もあわせて勧めることで、購入金額を向上させる施策などが検討できます。

RFM分析で顧客の購買パターンを分析し、注力すべき顧客セグメントを把握する

④因子分析で顧客や商品をクラスタリング

因子分析によって、商品やサービス、顧客など各セグメントにおいて、変数間のパターンや共通の因子を抽出し、売上に影響を与える要因を特定します。

これにより売上に貢献している商品・サービスの特徴や顧客グループの傾向を把握したり、分析の結果をもとに、顧客グループごとにマーケティングやプロモーションの戦略を変更するなど、効果的な施策の立案に役立てることができます。

データのパターンや関連性を特定したい

例えば「スーパーマーケットの商品購入におけるデータのパターンや関連性を特定したい」場合、以下のような流れが考えられます。

  1. 購買データからどの商品カテゴリ間で結びつきが強いのかを分析(アソシエーション分析)
  2. ①で「ジュースとともにお菓子も70%の確率で購入される」ことが分かったので、どのジュースに対しどのようなお菓子が選ばれているのか、また価格帯による差があるのかを分析(クロス集計分析)
  3. 購買データから価格や品質など何を重視しているかを抽出し、顧客をクラスタリングすることで、ジュースとお菓子を同時に購入する顧客セグメントを理解する(因子分析)

①アソシエーション分析で共起関係を抽出

アソシエーション分析とはビッグデータをマイニング(採掘)することで、物事の関連性を示すルール(アソシエーションルール)抽出するフレームワークです(「アソシエーション/association」は「間接的な結びつき」を意味する)。

扱うデータの量が膨大であるため、「このような前提ならば、こういった結果になる」という仮説を立ててから分析(データの深堀り)を行うのがおすすめです。

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アソシエーション分析では以下で説明している3つの指標を組み合わせてアソシエーションルールを導き出すことで、施策検討の判断材料にすることができます。

ここではスーパーマーケットの商品購入において「同時に購入される頻度が高い商品カテゴリがある」という仮説を立てた場合を例に用いて、各指標を説明します。

  • 支持度(support)
    • 支持度 = 商品カテゴリA・Bの同時購入数 ÷ 全体の購入数
    • 商品カテゴリA・Bが同時に購入される頻度を算出します。支持度が高いほど、商品カテゴリAとBが一緒に購入される頻度が高いと考えられます。
  • 信頼度(confidence)
    • 信頼度 = 商品カテゴリA・Bの同時購入数 ÷ 商品カテゴリAの購入数
    • 商品カテゴリAを購入した際に、同時にBが購入される割合を算出します。信頼度が高いほど、商品カテゴリAとBが同時に購入される傾向があると考えられます。
  • リフト値(Lift)
    • リフト値 = 信頼度 ÷ (商品カテゴリBの購入数 ÷ 全体の購入数)
    • 商品カテゴリA・Bが同時に購入される確率が、商品カテゴリBのみ購入される確率に比べてどれだけ高いかを算出します。リフト値が1より大きい場合、商品カテゴリAとBが同時に購入される傾向があると考えられます。1より小さい場合は、商品カテゴリAを購入することで商品カテゴリBが購入されにくくなる、リフト値が1の場合は、商品カテゴリAとBに相関関係はないと考えられます。

②クロス集計分析で要因の特定や傾向を分析

クロス集計分析は2~3個のデータカテゴリの関係性を調査するためのフレームワークです。

列と行にそれぞれ異なるデータカテゴリを配置し、交差するセルには集計データを入れることで、異なるカテゴリの関係性や相関を把握することができます。

購買行動であれば商品の種類や価格帯、顧客の属性であれば性別や年齢、地域などが考えられます。

クロス集計分析でデータカテゴリ間の関係性を調査

③因子分析で購買パターンや商品の特性をクラスタリング

最後に因子分析を行うことで、顧客がどのようなことを重視して購買に至っているのか、また商品のどのような点が購買に影響を与えているのかを把握します。

売上に影響を与える要因を特定したい

例えば「どのような要因がどの程度売上に影響しているのか特定したい」場合、以下のような流れが考えられます。

  1. 商品価格、広告費、競合他社などが売上にどの程度影響しているかを予測/評価(重回帰分析)
  2. 要因ごとにグループ化を行うことで、最も売上に影響を与える要因のグループを特定(因子分析)

①重回帰分析で複数の要因による影響を評価

重回帰分析とは、複数の要因(説明変数)が対象(目的変数)に対しどのような影響を与えるのか分析するためのフレームワークです。

例えば商品価格の上昇により売上が減少したり、反対に価格が下がることで需要が増え、売上が増加することが考えられます。

広告費の増加は、商品の知名度や認知度の向上につながるかもしれません。それらが顧客の購買行動に結びつけば、売上の増加が見込めます。

また競合商品の価格が下がることで自社商品の需要が低下したり、反対に競合商品の価格が上昇すれば、自社商品の需要が高まることが考えられます。

複数の要因が互いに関連することで関係は複雑になりますが、重回帰分析を用いることで各要素の影響度や相対的な重要度を評価し、売上に影響を与える要因を特定することができます。

重回帰分析で複数の要因が対象にどう影響しているのかを分析

②因子分析で要因をグループ化

因子分析でマーケティング関連や価格関連、競合関連ごとなど要因をグループ化することで、売上に影響を与える主要な要因のグループを特定し、戦略や施策の立案に役立てることができます。

売上分析に使えるツール

Excel

さまざまな企業で導入されている場合が多いため、気軽に使い始めることができます。

また表や項目の設定が柔軟であるため、自社にとって使いやすい集計ファイルを作成できます。

一方でデータ量が増えるとファイルが重くなったり、ファイルが破損してデータが消えるなどのリスクがあります。

また今回ご紹介したアソシエーション分析やデシル分析、因子分析は統計ソフトウェアやデータマイニング・データ分析などの専用ツール、プログラミングのスキルが必要となるため、Excelだけでは実施が困難な場合があります。

BIツール

BIツールは蓄積したデータから必要なものを抽出し、加工・分析することで、企業の意思決定をサポートするためのソフトウェアです。

大量データの分析が可能であるため、現状把握や課題発見がしやすくなる他、レポートや帳票の作成が効率化できます。

主な機能としては以下の4つが挙げられますが、製品によって得意とする機能は異なります。

  • 可視化・レポーティング
  • OLAP
  • データマイニング
  • プランニング
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目的に合った売上分析を行ってビジネスを最適化しよう

売上分析を実施するには、複数のフレームワークやプロセスの実施に加え、さまざまなデータを扱う必要があります。実施する目的を忘れずに、目的に合致する売上分析を効率よく行うことで、自社のビジネスの最適化に役立てていきましょう。

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